■北鎌倉に工房を移す
工房を東京から北鎌倉に移したのは50才になった頃(1994年)です。
なぜ鎌倉かというと、私が描きたい素材がここには多くあるからです。
大船のフラワーセンターでは、草花はすぐ傍で観察出来ますし、今なら八幡宮の寒ぼたん園など、好きな花に恵まれており、勉強に最適です。
心象風景として絵をまとめるとき、お寺さんや神社などの雰囲気も生きてきます。
また、工房の裏山に行けば、自然が沢山残っているので、例えば、落ち葉を集めて、白い布の上に撒くだけで、実に様々な茶色の色を見ることが出来ます。
私が育ったのは栃木県の山の中ですが、毎日、自然を相手にしていたせいか、扱うモチーフは自然が中心で、関東地方の花を多く描くようになりました。
富士山中に咲くフジアザミ、富士山五合目近くのはえまつ、潮来の水辺の植物など関東には描きたいものが沢山あります。
■染色作家になる
(15才で田畑喜三郎氏に弟子入りした当時の模写帳)
私は15才で友禅の田畑喜三郎先生に弟子入りしました。
田畑先生と兄弟弟子にあたる田島比呂子先生も一緒に仕事をしておられました。 現在では、田島先生は友禅で人間国宝になっています。
私は最初の3年間は子守をしていましたが、先生や職人さん達の技は毎日見ていました。
なにをどう勉強していいかわからないまま、染色のための図案を写しました。 正倉院御物の本があったので、時間があれば模写していました。
図案を覚えたり、筆遣いの訓練などにとても役に立ちました。
また、正倉院の御物は図案の宝庫で、後年、有名な画伯の絵のモチーフが、御物の図案をその画伯なりにアレンジしたのを発見したりすると、その画伯と自分との距離が一気に縮まったような気がしたものです。
後から思うと、田畑先生、田島先生というすばらしい師につくことができたのは非常に幸運でした。
一通り染色技術をマスターし、23才で独立しました。
■日本画家を志す
24才の時に、日本画の堅山南風先生に師事し、南風画伯の弟子の杉崎芳章画伯に弟子入門いたしました。
杉崎先生からは、横山大観先生、南風先生などより受け継いだ、伝統的な日本画の技法を教えていただきました。
また、「師は自然ですよ」という言葉をいただき、今後、花鳥画を描く上での基本を学ぶことができました。
■私には職人の血が流れています。
(画室の絵の具)
(画室の筆)
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私には職人の血が流れています。
おやじが宮大工の棟梁でしたから、子供の頃、毎日大工仕事を見たり職人さんが働いているのを見ていました。
ですから、友禅の染色技術にしても、日本画の筆遣い、刷毛使い、絵の具の使い方なども、見て覚えるものだという意識が強いのです。
覚えるためには、もちろん見よう見まねでも、何回も繰り返し繰り返し練習しなければなりません。
私は、日本画は自然の中から素材は取るのですが、絵は心象風景を画室で再構成するものと思っています。
ですから、技術的な裏付けが非常に大切な要素になります。
心象風景というのは自分の夢、ロマンの追求ということでしょうか?
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■雲竜のふすま絵(逗子の法勝寺)
私の場合、制作期間は長い方だと思っています。
制作依頼を受けてから1〜2年は自分の中で熟成させ、構想が決まってからは一気に描きあげます。
南風先生が鳴龍の天井画を描いたとき、2〜3年は各地の天井画を見て歩いたということですが、私の場合の法勝寺のふすま絵も、熟成するまでかなりの時間が必要でした。
この絵は4ヶ月で描きあげましたが、下絵を描いて毎日眺めていると、絵のほうからこういう風に描いて欲しいと語りかけてきます。
そういう意味では一作仕上げるのにとても長い時間が必要です。
(法勝寺の雲竜図のふすま絵)
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(制作中のふすま絵)
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■内弟子(平八工房スタッフ)
平八工房には3人の内弟子が居ます。
友禅染めの技法を伝えるには、どうしても内弟子のように、毎日接して、技法を覚えてもらうという伝授方法が必要です。
友禅染には、大きく分けて10の工程、細かく分ければ18の工程があります。 その一つ一つが、口で言い表すより実際にやってみて、それを見て貰って覚え込み、自分で修練して技量を上げるという、いわば職人の技術で成り立っています。
普通は、下絵師、糊師、友禅師、染め師、装飾師と分業するのですが、わたしは全部を一人でやります。
内弟子にも、一人で全部出来るように伝えるつもりです。
下の写真は、左側が和紙に描いた私の原画、右側は内弟子が染色したものです。
(天女図の原画)
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(スタッフの友禅染)
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(染め上がった友禅)
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(スタッフと)
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■個展
2004年の2月4日から2月23日まで、鎌倉のギャラリー「壱零参堂(いわさどう)」で、ひなまつり展があり、内弟子と共に出品しています。
この展覧会は他の作家の方達との共同展ですが、私自身の個展は出身地の「広重美術館」で、2005年10月と11月に計画中で、出品作品の制作に取りかかりました。
「馬頭町広重美術館」 〒324-0613 栃木県那須郡馬頭町馬頭116-9
電話番号:0287-92-1199
■日本画教室
平八工房では、毎週日曜日に日本画教室を開いています。
教室には、全く初めての方から、展覧会に出品される方、染色を習いたい方など、様々な方が習いに来ています。
朝10時から、夕方4時頃まで、とてもにぎやかで、みなさん楽しんで日本画を描いています。
■今後のチャレンジ
私は60才になりました。
私には職人の血が流れているというのは先にお話ししましたが、日本画を通じて、職人の技や知識を表に出し、花鳥画で新境地を拓きたいと考えています。
■佐藤平八作品集
(牡丹(部分)) |
(太陽) |
(鶴岡八幡宮ぼんぼり祭り 協賛出展) |
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平八工房
住所:鎌倉市山ノ内696
電話:0467-47-5951
営業時間:10時30分から午後4時30分
定休日:毎週月曜日
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