■ 鎌倉へ
東京の新宿歌舞伎町の隣の大久保というところで生まれ育ちました。当時、周辺の学校は校庭がアスファルトで舗装されていました。結婚して1979年に鎌倉の今泉台に来たら、幼稚園も学校も土のグランドだったので驚きました。鎌倉には里山があり、そして家の近くには鎌倉湖があります。子供も外で遊ぶことが好きだったので、シャベルを持ってザリガニを取りに行ったり、秘密基地を作ったりしました。子供のころは、土で遊んだというのが普通でしょうが、私の場合は、家の小さな庭くらいしか土に触れる機会がなかったので、子供たちが土に触れられたこと、そして緑が大切だと思ったことが鎌倉に住んでの良さかなと思いました。
■ 活動のきっかけ
1988年に下の子が幼稚園に入り、近所の人の紹介で生活クラブに入り、神奈川ネットワーク運動の活動にも参加しました。鎌倉の緑地を守るというのが、神奈川ネットワーク運動の公約としてあり関心を持っていました。
その後、神奈川ネットワーク運動から市会議員にどう?というお話があり、1997年に議員になりました。
当時、議会の中では市長に向かって「緑を守れ、緑を守れ」といっていました。しかし、実際は会社や個人が持っている土地で不法に持っているわけではありません。しかも市街化区域で、開発しようと思えばできる場所です。それを市が「あなた達、土地を提供しなさいよ」とは言えないわけです。市も緑を守りたかったけれど、守るには沢山のお金がかかるのです。それで、その「買い取りのお金をどこから出すのか」ということになり、、お金がないから無理だよねという議員と、お金がないけれど何とかしようという私達のような議員がいました。そのせめぎ合いの中で、「広町の緑地を守ろう」という鎌倉の自然を守る連合会が、自分たちで寄付を募って緑を守ろうと活動を始めました。そこが鎌倉らしい守り方だと思いました。
■ 三大緑地と保全の係わり合いについて
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鎌倉の大規模宅地開発が進むなかで、三大緑地特に「広町 の森」と「台峯緑地」の保全活動が急務でした。「北鎌倉の景観を後世に伝える基金委員会(なだいなだ会長=当時)」、「広町・台峯の自然を守る会(井上ひさし理事長=当時)」、「鎌倉の自然を守る連合会(佐藤魁会長=当時)」など多数できました。
一方、鎌倉風致保存会は1964年に鶴岡八幡宮の裏山が開発されそうになった時に「御谷(おやつ)騒動」という反対運動がおこり、その際、大佛次郎さんら が「イギリスにはトラストというものがある」と紹介されたこともあって、日本で最初のトラスト団体になりました。
それに習って、「広町の森」や「台峯緑地」を守ろうとする諸団体もトラスト運動を始めました。 |
■ オックスファムに触発される
1996年に神奈川ネットワーク運動の視察でイギリスに行きました。オックスフォード大学の関連でオックスファムというすごく立派な運動組織がありま
す。当時、イギリス全土に 何百というお店を持っていて、銀座や渋谷のような場所に立派な店舗を構えていました。町の中にポストのような物があり、「いらなくなった衣類はここへ入れてください」という運動をしていて、それをトラックで回収して大きなリサイクルセンターで仕分けをします。そのまま売れるもの・繊維に戻すもの・工場で使う雑巾・ウエスなどに分けて、各お店へ無料で提供しています。
その頃「あんな店があったらいいなぁ」、と思っていたら、神奈川ネットワーク運動・鎌倉という私の支持母体がちょうど設立15周年ということで、ホテルで
パーティーをやるとか、いろいろな案があったのですが、それなら、私がイギリスで見てきたオックスファムの鎌倉版 をやらせてほしいと提案して、みんなのりがいいので、「いいね、やろうやろう!」ということで、1996年にみどりショップを始めました。
オックスファム
少数の有償スタッフと多数の市民ボランティアが店舗を運営。売上から経費を差し引いた収益を全て第3世界の海外支援資金に当てている。扱う品物は市民から
の寄付品と、第3世界産品など。
オックスファム ウィキペディア
■ みどりショップ開店
最初は、三年間だけやろうと思っていました。大きな目的が、「広町・台峯の保全」ということでした。市民のトラスト団体を応援しようと思い、僅かですがそうやって私たちが応援することで、トラスト団体が元気になり、その元気な活動を鎌倉市が評価して、市民がこれだけ頑張っているのだか
ら、鎌倉市の方も税金を使ってでも保全していかなくてはと考えてもらいたいという思いがあって始めました。広町・台峯の保全に関して三年といったのは、すでに事業者が開発の申請を出していて、ちょっと待って、ちょっと待ってというせめぎ合いの時でした。開発許可が出て、「残念ながら宅地になって終わり
ま した」となるか、「守られました」になるか、三年以内には結論が出るなと思ったからです。
開業のとき300万円を皆さんから借りました。一人500円で会員になれるのですが、お願いして、1口1万円の市民債のような形でつまり借金ですけれ
ど、 店舗のリフォームもしなければならないし、棚やレジスターも買わなきゃならないなどの費用で、それだけでも 300万円はかかるだろうと思って出資を募りました、皆さんの協力で298万円が集まりました。そのようにして開店し、当初はいい品物を皆さんにたくさん出していただき、予定よりもたくさん売れ、何年もしないうちに298万円は完済しました。
■ みどりショップ徐々に知られる
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最初の頃は、チラシを配ったりしていました。お店に来た方にパンフレットを渡したり、「買い取りですか」とお店に来られた方に「ごめんなさい、全部寄付していただくのです」など、口コミが多いです。鎌倉市のエコショップには登録しました。最初の頃は、ケーブルテ
レビなどが取材に来ました。こちらからは売り込んだりはしてはいないのですが、多数の新聞に取材をしていただいて掲載されました。又、それを見て来てくださる方もありました。
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■ みどりショップの名称
みどりショップの名称は、これ以上市内の貴重な緑を減らさないで、市民の為に守ろうということから名付けました。
■ みどりショップの仕組み
各家庭で眠っている衣類や靴、アクセサリー、食器などを無料で提供してもらい、店で販売し、店員さんはボランティアで、売り上げか ら経費を除いた分を市民トラスト団体に「寄付」する形でスタートしました。その後、嬉しいことに広町と台峯の保全が決定したことから、緑地の手入れをする団体も寄付先に加えました。
現在では、市の緑地保全基金を含め、6団体に寄付しています。
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■ 万が一、売れ残った場合の処分方法
年に何回か、季節の変わり目などに全品の半額セールをやって、売り切る努力をしています。売れない食器は、お蔵入りにして、少ししたら、また店に出したりしています。せっかく無料で出していただいたものなので、必ずどなたかの元へと思っているのですが、どうしても売れ残ったものは処分させてもらっています。資源回収協同組合にも多大なご協力をいただいて、ファイバーリサイクルや事業系ごみに出しています。
■ みどりショップの運営
小さな店ですけれど、私たちの店をそれぞれのトラスト団体が連携できる場にしていけたらいいなと考え、総会にもそういう方々をお呼びして報告しあってきました。そして自分たちの寄付がどのように使われているか、見に行ったりもしました。 |
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その一環で、保全している緑地を見せていただくツアーで台峯や広町や十二所果樹園や明月荘そして昨年は埼玉のトトロの森へ行ってきました。 |
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■ 15年の歴史を閉じる
あっという間に15年経ってしまいましたが、実は、今年2014年の5月をもってみどりショップは閉店することになりました。
店舗の老朽化がひとつのきっかけとなり、震災の可能性が大きくクローズアップされてきた中で、メンバーとかなり時間をかけて話し合ってきました。その話し合いの中で、広町と台峯の保全という当初からの目的を果たすことができ、支援先の各団体がそれぞれの活動を元気に展開されていることで、私たちの会も一定の役割を果たすことができたといっていいのではないかという結論に至ったのです。
5月の連休明けからは、15年の感謝を込めて連日セールを行い、予想以上の売り上げをあげることができました。まだ最終的な集計が済んでいませんが、15年間の寄付金額の累計は3000万円くらいになりそうです。店舗は5月で閉めましたが、会としては、当分存続させ、この15年のまとめをしっかりしていこうと考えています。9月20日には、鎌倉芸術館で感謝のつどいを開きます。
鎌倉にはまだまだ守らなければならない緑地があり、また、保全が決まった広町や台峯にしても、どうやって維持管理をし、生態系を保全していくのか、そのことに市民の力をどれだけ示せるのかといった問題があります。
15年間のみどりショップの活動から得たものをこれからも大切にして、鎌倉の緑地に関わっていきたいと考えています。
■リンク集
▲みどりショップ
▲北鎌倉の緑を後世に伝える基金
▲広町・台峯の自然を守る会
▲鎌倉の自然を守る連合会
▲NPO法人 鎌倉広町の森市民協議会
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