鎌倉にゆかりのある方にお話を聞く…第13回 My 鎌倉
今回のゲスト
小宮山藤雄さん(前鎌倉シルバー・ボランティアガイド協会会長)
 地元の方が鎌倉の街を案内して下さるシルバー・ボランティアガイドは、現在は59名。平均年齢71歳のシルバーパワーは観光客にとって強い味方です。そんなガイド協会の前会長である小宮山さんにお薦めの場所や、ガイドの苦労話などを伺いました。案内する立場から見た鎌倉は、どのような街なのでしょうか?

「故事来歴が鎌倉を楽しくさせる」

 まず、鎌倉シルバー・ボランティアガイド協会のことからお話を始めたいと思います。当協会の歩みは、鎌倉市に住む60歳以上の方を対象に市が募集し、養成講座を開設したところから始まります。8年前の第1期は講座受講期間が半年、それでは短いという意見を反映して2期目からは1年間、講習を受けました。お寺の住職さんや神社の神主さん、学者さんなどから講習を受けるわけです。そして市長の認定証をいただいて、ガイド協会の会員になります。ガイドのコースには、お客さんからのリクエストを反映する場合と、こちらがコースを設定しまして、鎌倉市の広報を通じて募集するといったスタイルがあります。人数を問わずにやっていますので、最近は申し込みも多くなり、今は大変いい状態であるといえます。現在約60人の協会員が、月に一人平均2回ぐらいの割合でガイドを行っています。一人の受け持つ単位は20人。また、最小は一人からでも受け付けますので、御夫婦お二人だけのガイドというのもありました。鎌倉へ来る人は年間約2300万人と言われていますが、我々がカバーしているのは1万〜2万人といった範囲だと思います。  さて、具体的な場所を薦めるとなると難しいのですが、いくつか挙げてみましょう。まず、大仏コースといいますか、長谷観音辺り。普通お寺さんは、境内での食事は一切禁止なんですが、長谷寺はお弁当などを持っていくことが出来ますから、開放的なところだといえます。海に近いということから、明るい感じもしますし。また、大仏は国宝ですが、創造された年や誰が造ったのかが、ハッキリしていない不思議な存在でもあります。  切り通しも面白いと思います。馬が通れないように大きな石が真ん中に置いてあるとか、そういう構造の説明をして差し上げます。大仏口の切り通しなどは、人家の間を入って行かないといけないようなところにあるんです。ですから普通よそから来た人たちは、ほとんどわかりませんね。また、朝比奈峠の鎌倉側は昔のままで保存されています。この道は朝比奈三郎が一晩で作ったという伝説があるところです。切り通しのため山側から水が滲み出て道に水が大量に流れているので、一般的な散策には適さないかもしれませんが、昔の面影が残っている場所ではあります。「こんなとこがあったか」と、お年寄りや女性の方でも喜んで頂いています。  鎌倉は、由来や縁起、地理の説明を受けないと本当の面白さは分からないと思います。例えば、横須賀線が横切ってしまうまでは、県道のところまでが円覚寺の境内だったんです。池も小さくなって残っていますし。今の道路をふさぐような形で、駅からおりて来たポリスボックスのあたりと、反対側の門前さんの前の辺りに門があって、夜は閉門され通れませんでした。今も石垣がそういう形で残ってます。こういうことは説明を聞かないと全然わかりません。だからこそ、ガイドの意味があるんです。我々は、学者さんの書いたものとかお寺の縁起だとか、そういうものを読んだり、あるいは教えてもらった上で、当時の人の気持ちになりながら、往時の人々の生活などの想像を交えてお話しできるわけです。  ガイドと言うのは、実は一年程度の講習を終えただけでは直ぐに出来るものではありません。結局は経験が大切で、講習終了後も自分で歩いてまず道を覚えるところから始まって、何回も実際にガイドをやって、自分にあった形の物を作り上げて行く。そうして初めて、声出して皆さんを案内できるわけです。それには鎌倉を愛する心と誠意をもってお客さんに接し、同じ目線で一体となって鎌倉を知る。そんな奥の深いガイドは、私たちの生き甲斐になっているといってもいいでしょう。
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