「自然と公共施設の共存」
まず、今私が参加させていただいているプロジェクトのお話から始めたいと思います。現在、鎌倉市は鎌倉ケーブルテレビ(KCTV)の地域情報チャンネル(チャンネル5)を利用して「鎌倉市からのお知らせ」の放映をしていますが、将来的にはこれを拡大したような鎌倉市独自のチャンネルを持とう、というのが鎌倉市民チャンネルのプロジェクトです。このチャンネルでは番組制作の大部分を市民ボランティアによって行うという特徴があります。そのため、昨年の9月から60名ほどのボランティアを養成しまして、現在は一応研修期間が終了したという段階です。この4月から正式な活動に入るため、今は最後の準備をしています。ボランティアの方々は各分野で活躍した方が大勢いらっしゃいますので、その一人一人の経験が、このチャンネルの大きな財産になると思っています。その方々を演出・技術・編集等の様々なグループに配置して、それぞれの長所を持ち寄ってやってもらおうと思っています。参加できる時間が人それぞれだという点が、非常に調整を付けるのに苦労しているところですが、番組という作品を送り出すわけですから、作るからにはプロ並みのものを作っていきたいと思っています。さて、市民が鎌倉市という共通の器に対して何が出来るのか、それを考えて実行する場がこのようなボランティアだとすれば、鎌倉市が市民に対してどういうものを提供できるのかということの象徴が公共施設なのだと思います。私が今回みなさんにお薦めするのは、そんな公共施設である鎌倉中央公園です。私が鎌倉市の寺分という新興住宅地に移り住んできて30年になります。それまで住んでいた静岡や三鷹も、比較的緑の多い場所でした。ここを選んだのもやはり、鎌倉という街の持つ環境の良さ、そして緑の多さでした。ですから、すぐそばの谷戸の森を拓いて作った鎌倉中央公園は、私のお気に入りなのです。公園が出来る前は、立入禁止ではあったのですが、近所という気軽さからよくこの辺の雑木林に立ち入ったものでした。今でも道からそれてうっそうとした雑木林に入り込むと、本当に何の音も聞こえない無音の世界にいるような気がします。昔の鎌倉といいましょうか、時間を飛び越えて自分一人だけが立っているような感じを覚えるのです。谷を望めば、緑豊かな雑木林が広がっていく、そんなパノラマのような風景が楽しめます。谷戸の自然の中を歩きその道を辿ると、自分の中の生命が伸びてゆく気がします。私が今回、この鎌倉中央公園を素晴らしいとお薦めするに当たって、ひとつだけ但し書きがあります。それは「手直しをすれば」という一言です。苦言を呈する、といってしまうとはなはだおこがましいのですが、公園の計画に首を傾げたくなるような部分が幾つか見られるからです。中央公園では、第一期工事完了部分を公開しています。この部分は庭園風にしようという意図があったらしく、道路を整備するため多くの木を伐採してしまっています。今後の工事のためでしょうか、入り口から池に至るまでに大型車両が2台並んで走れるような、舗装道路が作られています。これがいかにも不自然で、しかも寒々しく感じられます。その反省からでしょう、二期工事以降分は道路の舗装をやめもっと自然を生かし尊重した公園になるということなので、私はそれを期待をしています。自然と人間の共存は、大変難しいことだと思います。しかし、鎌倉市民チャンネルという先取的な試みが行われている鎌倉市です。公園という公共施設についても、もっと市民の声が反映された形で完成していくのではないかと期待をしています。そういった希望も込めて、今私が一番気に入っている場所は鎌倉中央公園なのです。
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