鎌倉にゆかりのある方にお話を聞く…第21回 My 鎌倉
今回のゲスト
石川和子さん(陶芸家)
 八幡様横手の鶯谷に居を構える陶芸家の石川さん。ご自分の作品を制作する傍ら、教養センターでクラスを持ち、ご自宅でも生徒さんを教えていらっしゃいます。芸術家にとって、作品を作り出すそのエネルギーの源は人それぞれ。石川さんの場合は、鎌倉に住む人々との触れ合いがとても大切なことなのだとおっしゃいます。

 どうやって陶芸家になったのかと、よく聞かれることがあります。私は音楽関係の会社に9年ほど勤めていました。焼き物とは、もちろん縁もなかったし、身近な感じもしていませんでした。ただ、絵であるとか、物を作る仕事はわりと好きではありましたが。でも、ただ好きだから趣味でやっているというのではなく、やはり仕事にして食べていかなければ意味がないと思っていました。たまたま知っている人の紹介で、陶芸家の家に遊びに行って、初めて粘土で土いじりし て、本当にもう「いいな」と思ったのがきっかけなんです。私が土のどこに興味を感じたかと言えば、手を動かしていればどうにか形は出来ていくという部分でしょうか。絵はとても難しいと思います。真っ白なところに、ともかく何か描いていかなければならないのですから。でも土の場合は、いじっているうちに、形が見えてきます。それがヒントになって、さらにイメージが広がっていく面白さというのがあるんです。結構気楽な作業です。多少イメージが頭の中にあっても、体が作っていくという作業ですから。それが私の性にあっていたのでしょう。 さて、鎌倉のお奨めの場所と言うことですが、私にはこれといった場所をお奨めすることが出来ません。私自身はあまり鎌倉を散策したりはしないからでしょう。お天気がよくて、どこかに出かけたくなる元気があるときは、その余力を仕事に向けたくなるからです。ただ、近所の八幡様などは、用事があって出かける行き帰りに眺めて楽しんでいます。秋になると曼珠沙華の真っ赤な花が咲き乱れていて。わざわざ見に行くような人のいない、数少ない私の秘密の場所です。  鎌倉という場所に対して、私はあまり固執はしていません。鎌倉に移ってきたのは実家が大船で近所だったからですし、こちらに少し知り合いがいたからです。特に鎌倉に何かを求めてきたわけではなかったのです。しかし、ここに居を構えてみて、よかったなと感じることはもちろんあります。それは、面白い人がたくさんいるという部分でしょう。みなさんもご存知でしょうが、鎌倉には色々な方がいらっしゃいます。私は街で飲む機会が多くて、ぶらりと一人でも出かけていきます。そこでお話をするようになる人たちは、みなさん身の周りの「鎌倉」という街にに興味のある、そして世の中の色々なことをよく知ってらっしゃる方ばかりです。それが私にとってとても刺激になっているようです。その人間関係から仕事が生まれるとか。不思議に鎌倉には自由に何かをやってらっしゃる方が多いようです。そういう人たちが作り出す雰囲気はとても気持ちのいいものです。そして私はそこから何かをもらって、元気になっていくような気がします。たくさんの出会いがありましたが、明石ヶ谷にお住まいの絵描きさんと知り合えたのも、とても大きな財産だと思っています。この方に木版を教えていただいてもう8年になりますが、違った世界を教えていただいて、本当に感謝しています。鎌倉で仕事をしていてよかったなと思っています。私は仕事を一人でやっています。物を作るのは自分だけの世界の作業ですから。なので、色々な人と話をしながら、ちょっと気分転換したり、リフレッシュしたりしながらまた物に向かっていくことができる。鎌倉の人たちは私にとって、そういう意味でとても刺激的なのです。
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