鎌倉にゆかりのある方にお話を聞く…第23回 My 鎌倉 |
今回のゲスト | |
岡本詳三さん(竹細工の店おかもと) | |
西鎌倉で「竹細工の店おかもと」を営む岡本さん。伝統的な花篭を作るかたわら、ユニークなランプシェードや、ユーモラスな掛け花入れなど独自の作品を作っています。岡本さんには、竹についてのお話と、それを実感できる場所をご紹介していただきました。 |
竹林は地下で根がつながっています。春、新しい命、タケノコが顔を出します。竹林の一族は、この新しい子どもに地下茎を通じて養分をどんどん補給します。そして2〜3ヶ月でタケノコは一気に竹に成長し、次はまた翌年誕生する命のために、自らは肥ることなく、ひたすら養分を送り続けます。鎌倉でいちばんよく目にする孟宗竹などは、タケノコのとき、一日に1メートル以上も成長したり、高さは3ヶ月で15メートル、太さは直径15センチにもなります。他の植物に類のない成長の早さは、タケノコが偉いからではなく、一族の団結の力だと思います。一本の竹の寿命は10年くらいです。約60年に一度、竹は突然花を咲かせます。しかし、花が咲き出すとその竹林全体が枯れてしまいます。ただ、一部残った地下茎と実生で映えた竹とが、また長い年月をかけて竹林を復活させるのです。とても不思議な植物ですね。
大地にがっしりと根を張り林立する緑のストライプ。陽に透けた葉の重なりが作るグラデーション。強直な幹も、枝が付きはじめるあたりからしなやかになり、少しの風でサヤサヤ聞こえる葉ずれの音は、竹たちがおしゃべりしているようです。落葉した竹の葉は足にやさしく、地面を暖かく感じさせます。その地下では竹林中がつながっていて、仲良く活発に働いているみたいです。 ストレス解消には竹林浴がいちばんです。竹から活力をもらえますよ。ひんやりとした幹をさわりながら歩いてみるのはどうでしょう。竹林は思ったよりも明るく、ほのかに漂う淡い竹の香りが気持ちを鎮めてくれることでしょう。
誰でも間近に竹を見られる所といえば、やはりお寺ですね。まずは北鎌倉駅で降りて、円覚寺から出発しましょう。入り口を入って、すぐ左側に弓道場があります。その的のまわりは孟宗竹の林に囲まれています。孟宗竹は江戸時代に島津藩が中国より持ち帰ったものです。太くて逞しいこの竹はまさに武士好みで、食用としてもおいしいので、一気に全国に広がりました。袴姿で弓を引く凛とした姿勢の若者と、その猛々しい孟宗竹はぴったりで、絵になります。同じ弓道場の中にあるお地蔵さんを囲んでいるのが真竹という竹です。真竹は節間が長く、つやが美しいことから細工物にいちばんよくよく使われる竹です。可愛らしいお地蔵さんを守っているようで、微笑ましいですよ。国宝の鐘がある見晴台から、彼方に見える東慶寺の裏山には何千本という孟宗の竹林を見ることができます。竹は春に落葉するするので、春は竹林が黄色っぽく変わるのがここから良くわかります。俳句の季語では春なのにこの風景を「竹の秋」という由縁です。東慶寺は、四方竹という竹を墓の仕切や、庭の景色にうまく取り入れています。四方竹とは名のとおり四角い竹で、一辺が2センチ、長さは2〜3メートルで葉がすらりと長い、それは美しい竹です。タケノコも冬に出るという変わりものです。浄智寺には孟宗竹と真竹が共存している竹林があります。真竹のタケノコをリスが食べるという害が起きていて、穴の開いたかわいそうな真竹を見ることが出来ます。鎌倉では増え続けている野生のリスの被害があちこちで広がっているので、実に心配です。策はないのでしょうか?線路を越えて次は明月院です。あじさいが有名ですが、他の花木も美しさを誇っています。カメラマンがむらがってシャッターを切っています。主役であるあでやかな花たちを引き立てるために、後ろに緑深い孟宗の竹林を配してあり、その上には青空というロケーションは、心にくいばかりです。 次は少し離れてしまいますが、やはり竹といえば「竹の寺」、報国寺でしょう。手入れの行き届いた孟宗の竹林は本当に見事です。「こんな太くて大きな竹が3ヶ月で育つなんて……」などと触って実感して下さい。抹茶をいただきながら、根の張り、節の間隔、曲がり、色など、自分の好みの竹を見つけるのも楽しいです。茶屋の左側には、太い真竹が育ってきています。黒竹も植えられて増えるのが楽しみです。ぜひお勧めしておきたいお寺は鎌倉湖に近い称名寺、別名「今泉不動」です。滝のあるお寺として知られています。滝から落ちた水が、川を下っていきます。対岸に四方竹の美しい竹林が広がっています。その先は深い渓谷があり、川を挟んで孟宗竹と真竹の竹林が競い合って育っています。竹を見に訪れるのにふさわしい静寂なお寺です。まだまだ竹のきれいなお寺はたくさんありますが、ほんの一部を紹介しました。鎌倉は竹の豊かなところです。 |
▲TOP |