二代目 口上
生まれて一ヶ月たつかたたないうちに、私はこの家に貰われてきました。きょうだい七匹一緒に段ボール箱に入れられて、八幡さまの境内のどこかに捨てられていたのを、近くにお住まいの猫好きな奥さんに拾われ、そこから又私だけきょうだいたちと離れて、この家で暮らすことになったそうです。申しおくれました。私はメスの子猫で、ご主人さまの老夫婦からは、トラとよばれています。何だか古くさくて、やぼったい名前で、私は気に入らないのですが、何でも以前にこの家にいた猫がトラという名で、私がその猫に毛並みや毛色がよく似ているのだそうで、それが私が貰われることになった最大の理由らしく、つまり正確に言えば、トラ二世、二代目ということになります。先代のトラは、十年程前にこの家の隣にあった空き家の縁の下で生まれた生ッ粋の(?)野良で、それがこの家の奥さんのミルクで命を拾われ、やがて家の中で飼われるようになり、随分かわいがってもらったそうで、三年前病気で亡くなった時は、もう二度と猫は飼うまいとご主人ともども思っていたのですが、私があまり可愛かったからでしょうか、その禁を破ってしまったとのこと、これも運命、めぐりあわせというものでしょう。
鎌倉ケーブルテレビ広報誌
「チャンネル鎌倉」 平成12年4月号掲載 |
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