建長寺はJR横須賀線の北鎌倉駅から県道を南(鶴岡八幡宮の方向)に15分ほど歩きます。途中で横須賀線の踏切をわたり、道なりに県道を進むと左手にあります。
惣門、山門、仏殿、法堂、唐門、昭堂を地図から見る場合は、下の図の該当する「白抜き文字」をクリックしてください。新たなページとして開きます。
| 惣門 | 山門 | 仏殿 | 法堂 | 唐門(方丈前) | 唐門(西来庵) | 昭堂 |
県道から入るところにあって「天下禅林」の額を掲げる門は西外門(にしげもん)で、その内側の駐車場の先に惣門があります。惣門をくぐると受付があり、その先には堂々とした山門が目に入ります。
「建長興国禅寺」という額を懸けた山門の右手には、鐘楼があり、国宝の梵鐘がさがっています。梵鐘は建長七年(1255)、北条時頼(第五代執権)の寄進で、物部重光という関東の鋳物師(いもじ)の棟梁の作です。
山門のさきには両側に柏槙(びゃくしん)が並び、往時の姿がしのばれます。
その先は仏殿で、本尊の地蔵菩薩が祀られています。
仏殿の後ろは法堂(ほっとう)です。禅宗以外では講堂にあたりますが、講義や説教などをおこなう中心の建物です。
ここには千手観音が祀られており、その前にが釈迦苦行像があります。天井には雲竜が描かれています。
法堂の後ろには唐門があり、その奥は龍王殿と呼ばれる方丈です。 方丈の裏手には、庭園があり、池は「心」の字をかたちどり、心字池といわれるものです。
方丈・唐門の左手の道を奥に進むと、正面奥に正統院があり、そこから右に曲がり道なりに進むと三つの方向に分かれる地点にでます。右の道は回春院に、中央は半僧坊へ、左手は階段の先に河村瑞賢・通顯親子の墓があります。
河村瑞賢は、江戸時代初期の豪商で、東北の米を江戸などに輸送するための東西の航路を開いたり、 大阪の淀川の治水工事をしました。建長寺との縁は別荘が近くにあったことや建長寺に参禅したことによるものなどといわれています。
回春院は最近大覚池を中心に境内の整備が行われてきました。
中央の道を進むと勝上けんと呼ばれる山に向かいます。急な階段を登ると半僧坊権現を祀る社があり
建長寺の守護神です。
階段の周辺にはいくつもの天狗の像が立っており、上り詰めた境内からの眺望はみごとです。
ここから、建長寺裏山のハイキングコースへとつながります。
創建(開基)は第五代執権北条時頼 (1227-63)、開山は蘭渓道隆 (1226-86)、建長五年(1253)の建立です。寺名に年号が使われたことはこの寺の重要さがわかります。
蘭渓道隆は中国の宋の時代の高僧で、1246に来日しました。建長寺にあっては中国の禅宗に基づく厳しい規則を定め、同寺を禅宗の寺として確立しました。亡くなったときに、後醍醐天皇から諡(おくりな)大覚禅師を送られました。
建長寺を建てる前は、地獄谷といわれる処刑場があったところで、地蔵堂があり地蔵菩薩が祀られていました。 地蔵菩薩はその後別のところにありましたが、明治になり仏殿に移り、本尊の地蔵菩薩の脇に心平寺地蔵として祀られています。
その後、無学祖元(のち、円覚寺の開山)などの高僧が住持し、武士などの支持をえて栄えることになります。
無学祖元は円覚寺の開山として知られることになりますが、宋にあったとき元が侵略します。温州の能仁寺に難を避けていたところに元の兵が乱入、危うく切られそうになります。
泰然自若として喝(げ:仏の徳を讃える詩)を唱えたため、兵士は拝礼して去ったとのことです。
喝:
乾坤(けんこん) 地の孤筇 (こきょう) を卓 (た) つるなし
喜び得たり 人 空 (くう) にして法も亦た空
珍重せよ 大元三尺の劍
電光影裡 (でんこうえいり) 春風を斬る
意訳:
(元の侵すところすでに仏界に至り)
拙僧の杖を立てるとことろも無いとは。
だが感謝す、人も法もすべて空と悟ったこの身を。
大事にされよ、その長尺の剣。
わが首に振りおろすこと、春風を切ると何の違うことありや。
これは1276年とのことです。その2年前の1274年には第一回の元寇(文永の役)があり、3年後の1279年に北条時宗の招きで来日、 1282年 文永弘安の役で亡くなった両国の戦死者の霊を弔う円覚寺の開山となり、1286年示寂しました。
鎌倉時代の終わりころの絵図によれば、惣門、山門、仏殿、法堂などが一直線に並び、その脇に東司、浴室、僧堂、庫裏などが回廊により結ばれ、中国の禅宗寺院の様式をよく映したものといわれています。
鎌倉幕府が倒れたあとも足利氏の保護もあり、鎌倉五山として栄えました。
現在でも、禅宗の伽藍配置をよく残しているといわれています。
平成15年には創建750年を記念しての行事がおこなわれ、引き続き山門の修復や庫裏、唐門の改築など境内も整備されました。
11月はじめの風入れには、貴重な寺宝が公開され多くのかたが訪れます。