9月9日に鎌倉ガイド協会の研修会が開催されました。
今回のテーマは“日本庭園 鎌倉庭園について”で、講師は当協会ガイドの坂本哲夫が務めました。
諸外国からも注目されている日本庭園。特に欧米圏で日本の造園に興味がもたれています。鎌倉の観光資源としても重要です。
西洋では、ベルサイユ宮殿のような左右対称のデザインが多いですが、日本は非対称のデザインです。それは、キリスト教などの一神教と神様が複数いる多神教の違いと考えられます。一神教は、「使用する素材は神様が作ったものだからかえていい。」と考え、多神教では「岩一つでも神様が作ったのだからそのままにしておく。」と考えます。日本においては、神が宿る「磐座(いわくら)」など巨石を祀る場所が神社になるなど信仰の関わりから発展したと考えられます。武士達は禅宗寺院の庭園を造り、自然風景重視から、抽象的な表現の庭園を造っていきました。室町時代になると、武家社会に合わせた書院造建築の庭園は、座敷の中から眺める2次元から、楼閣から庭を見下ろす3次元の視点へ、さらに植物の時間経過も考えて計画された4次元の庭となりました。そして庭園を回遊して鑑賞するものへと発展していきました。外国の方に人気の枯山水庭園は、禅にまつわる古事を庭園の造形におきかえて最も抽象的な表現となりました。枯山水は、寺院庭園を中心として築造され、日本庭園を代表する様式として知られるようになりました。
鎌倉にある庭園は、三方を尾根に囲まれた谷に造られた寺の参道両脇に植栽を施す露地庭園風が多いです。鎌倉寺院の多くを占める禅宗寺院は伽藍を一直線に配置し、ビャクシンの前栽列樹の形式です。
代表的な鎌倉庭園を紹介します。
・鶴岡八幡宮 
風水の四神木、東にヤナギ、西にキササゲ(現在は枯死)、南にキリ、北にエンジュが植えられている。
・建長寺
禅宗庭園の基礎となる。蘭渓道隆が中国から持ち込んだビャクシンは樹齢750年、高さ13m。
・円覚寺
山門入口近くに白鷺池(放生池)が造られている。方丈庭園では池と枯山水で構成されていた。
・瑞泉寺
昭和45年に発掘された禅宗庭園である。錦屏山の尾根の岩盤を削りその前に池がある。谷の上部に貯水池を造り雨水をため、必要な時に栓を抜き滝とした。これは天龍寺庭園の「龍門瀑」の鯉魚石に似ており原型と思われる。

日常で花を眺めたり逍遥していた庭に大切な意味があった事を学んだ講演でした。庭園には仏教の教えが息づいていることを改めて感じました。変化していく庭園を楽しめるのも、歴史を理解しているからこそです。今回の講演で得た知識は、今後の会員のガイド活動の参考になるでしょう。

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