2月10日、協会員を対象に「自主研修会」が鎌倉市教養センターで開催されました。
今回のテーマは「寺社建築」です。講師は当協会ガイドの松林宏が務めました。日頃より、寺社にお客様をご案内することの多い私たちガイドにとって、寺社の建築がどのような経緯で生まれ、変化をしてきたのかを学ぶ大変貴重な機会となりました。

前半は、日本古来の神を祀る建物である「神社建築」と中国から朝鮮半島経由で仏教伝来と同時に伝わった「寺院建築」について、屋根の材料と形・柱・組物・床構造など特徴の比較から始まり、次いで外来の「寺院建築」は、遣唐使の中断により、地震、台風、降雨量の多い日本の気候・風土に合わせて種々の発明【野屋根、桔木(はねぎ)、長押(なげし)、他】があり「和様」化が進んだこと、さらに鎌倉時代に輸入された「大仏様」「禅宗様」と融合して「折衷様」化していった歴史概要について説明がありました。本来、異質な神社建築と寺院建築が一体として発展し、今日に至っているのには、日本独特の宗教思想である「神仏習合」が背景にあるとのことです。平安時代末から鎌倉時代中期に、中国・宋から輸入された「大仏様」「禅宗様」は、当時の日本では用いられていなかった「貫(ぬき)」が導入され、耐震性にすぐれており、柱や梁も細い材料を用いることができるようになったため、その後の日本建築に大きな影響を及ぼします。そして、この「大仏様」「禅宗様」は寺院建築のみならず、神社建築にも変動を与えたとのことです。

後半では、建築様式・構造・部材等について、鎌倉の寺社と関連付けながら説明がありました。寺社建築は、屋根(切妻造・寄棟造・入母屋造)・柱(丸柱、角柱)・組物(斗,肘木)などの集合体であり、それぞれの部分について詳しく学ぶことができました。
そして、後半の最後の〈円覚寺舎利殿の美の秘密〉についての話も皆さんの関心を集めました。禅宗と共に日本へ持ち込まれた「禅宗様」の典型であり、その繊細さと美しさに誰もが魅了されるお堂について講師の見解が述べられました。その美しさの秘密のひとつは、身舎(もや)と裳階(もこし)の屋根のバランスの取れた優美な反りとその反りをシャープに見せる屋根材(杮葺き)にあるようです。その後も興味深い話を伺い、改めてじっくりと円覚寺舎利殿を観察してみたくなりました。

今回の自主研修会には78名の会員が参加し、寺社建築の歴史・構造・機能・美しさなど、多くのことを知る貴重な機会となりました。

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