講座風景1 NPO法人鎌倉ガイド協会(以下、当協会)では、当協会所属会員のガイドスキル向上及びモチベーションアップを目的に、定期的に自主研修会を開催しております。今回、コロナに関わる規制が緩和されたため、定員を設けずに門戸を広げ2023年4月8日に教養センター(鎌倉市笛田)にて開催されました。
 5つの班で構成する当協会は、各班が講師を持ち回りで担当するのですが、今回は1班が担当し、講師は1班所属の青木協会員です。別名「笑風亭かん治」と言う高座名を持つ玄人はだしの落語家でもあります。・・・
と言うことで、構成は第一部の講座こうざと第二部の高座こうざに区分されていました。

 

第一部の講座 タイトル:皆で楽しむガイドに役立つ『吾妻鏡』
 全52巻ある吾妻鏡の内、「西行法師と源頼朝のエピソード」・「源頼朝の挙兵は文覚上人のある行動から」・「和田合戦の発端」を詳述している項目をピックアップし、興味深く面白可笑しく解説してくれました。その全てに落語の演目があり、どうして当該項目を選んだのかの理由も納得です。

 

「西行法師と源頼朝のエピソード」
 北面の武士だった佐藤兵衛尉義清のりきよが出家して西行と名乗り西き、鎌倉で源頼朝と出会う場面や出家の原因と決意風景を書画を交えて原文で読み解きます。私なんぞ吾妻鏡を読み解こう!と張り切っても、専門家による現代訳の文章に目を通す程度ですが新鮮で勉強になりました。
 吾妻鏡は日記調で書かれているので最初に日付と天気を記載します。天候のハレを現代では「晴」と書きますが、「霽」と書いて「ハルル」と読むそうです。雨が降り終わった状況を示すそうで、中世の人達の機微の細やかさを感じ天候に一喜一憂して暮らしていた当時も偲ばれ、これを知っただけでも得した気がしました。

講座風景2
「源頼朝の挙兵は文覚上人のある行動から」
 頼朝の父・義朝は平治の乱で敗れ亡くなりますが、平清盛は継母の池禅尼の嘆願で頼朝の命を助けます。「“いず”れに流そうか」―「伊豆に流せ」と配流が決まりました。ここで後白河上皇に顰蹙ひんしゅくを買い伊豆に流されていた文覚上人と出会います。
彼は、髑髏を3個持参して「これが父上の髑髏だ。平家を討伐して父上の敵討ちを!」と頼朝に挙兵を勧めます。
 何故3つも・・・?昨年の大河ドラマの場面にも出てきた理屈が披露されます。文覚曰く、「小さいのはご幼少時、中くらいのが元服の折、大きいのが亡くなった時の物」・・・だそうです。
 文覚上人は彼の友人の妻である美人の「袈裟御前けさごぜん」に横恋慕し、誤って彼女を殺めた過去もありました。(袈裟御前ではなく“今朝のご膳”と言うオチが付きます)

 

「和田合戦の発端」
 御家人同士のイザコザでは鎌倉市街戦の最たるものである和田合戦は、「泉親衡いずみちかひら」と言う信濃の武士の企みが露呈されて明るみになり、北条義時が当該事件を利用して和田一族を滅ぼした北条一族の陰謀である・・・と先輩から教えて頂いた記憶が鮮明なのですが・・・
 【落語『鎌倉星月夜』】では、北条義時の息子・朝時の松島(奥女中)への片思いが発端なのです。松島は逆に彼女を助けた和田義盛の三男朝比奈三郎義秀に夢中になり、めでたくゴールインするのですが、その二人に朝時が憎しみを覚えると伯母の政子がシャシャリ出て二人の仲を裂いてしまうと松島は思い悩み自害する顛末です。

 必ずどこかにオチが入りますが、吾妻鏡を詳しく知らない私はどこまでが吾妻鏡に忠実でどこにオチが入り笑ったら良いのかが不明です。良く言われる話ですが、海外で現地の喜劇等を観た時に、どこで笑ったら良いのかは周囲に合わせるしかない場面を想像しました。

 

第二部の高座 演目:落語『お血脈(おけちみゃく)』

高座風景 前半の講座は終了し、部屋の換気を含めた休憩を挟んで後半の高座が始まりました。

 ホワイトボードの前には赤い毛氈の敷かれた演台が用意され、颯爽と浴衣に着替えた青木講師の登場、否!「笑風亭かん治」さんが目の前に現れました。落語『お血脈』の始まりです。
 イントロ部分の「まくら」から始まりますが、この時はまだ前半の講座とさほど変わりなく物静かで堅苦しさを感じましたが、本編に入るとスイッチが入ります。羽織を脱ぐ代わりに顔付もしゃべり方も「笑風亭かん治」に変身しました。

 

 長野善光寺に置かれている「お血脈」と呼ばれる代物のせいで、地獄に送られる死者が減り閻魔大王が困ってしまい、石川五右衛門にその「お血脈」を盗みに行かせる・・・ストーリーですが、臨場感もない私の解説は止めておきます。興味のある方は【YouTube“笑風亭かん治「お血脈」”】で検索を!
動画配信は1ヶ月後くらいでGW前後になるそうです。


笑風亭かん治さんがオチをさり気無く加えると拍手喝采です。
周囲からは、「1班の会合はいつもこんなに楽しいの?」と漏れ聞こえてきます。
否‼もっと緊張感があり、アカデミックな班ですよ!」と言い訳をして取材記事のペンを置きます。

広報 Y  

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